脳科学と心理学の違い

脳科学と心理学の違い

「脳科学」や「心理学」という言葉を、最近テレビや本でよくみかけるようになりました。
では、脳科学と心理学はどこが違うのでしょうか?

国語辞典でそれぞれの言葉を調べてみると、
●脳科学=知覚・運動制御・記憶・学習・感情などの脳の働きを研究する学問。
●心理学=生物体の意識や行動を研究する学問。
と出てきます。あいまいで境界線が難しい分野です。

「アートセラピーの教科書」では、
●脳科学=再現性の高いもの
●心理学=再現性のないもの
と定義しています。

米マサチューセッツ州タフツ大学の実験

たとえば、以下のような実験は、脳科学と心理学の違いが、とても分かりやすい例です。
米マサチューセッツ州タフツ大学で行われた、記憶に関する実験です。

18~22歳の若者と60~74歳の年配者を、それぞれ2グループに分けて単語記憶テストを行いました。
Aグループには「このテストは高齢になるほど点数が低くなる記憶力テストです」と伝えました。
Bグループには「これは単なる心理学の実験です」と伝えました。

すると、
Aグループ:若者平均48点、高齢者平均29点
Bグループ:若者平均49点、高齢者平均50点
という結果になりました。

同じテストにも関わらず、高齢者の平均点に大きな差が生まれたのです。

実験結果からも分かるように、老いによって記憶力が衰えるというのは、思い込みです。

0歳と100歳を比べてみると、確かに脳細胞は70%減っています。
ところが、3歳と100歳の人の脳細胞の数はほぼ同じです。

人の脳細胞は0歳から3歳にかけて、70%減少します。
使用しない脳細胞を間引いているのです。
そして、残りの30%をずっと使い続けます。

これは、住む地域や、生い立ち、人種などが異なっていても同じです。
つまり、再現性が高い事実と言えます。

先にも説明した通り、「アートセラピーの教科書」では再現性の高いものを脳科学、再現性のないものを心理学、と定義しています。

この実験では
●脳科学的に
脳細胞は3歳からほぼ減少しないので、高齢化とともに記憶力が低下することはないといえる。
●心理学的に
思い込みや本人の自信の有無によって、高齢化とともに記憶力が低下するといえる。
ということになります。

心理学は、答えは人によるけれど、〇〇の結果となることが多い。という統計学的な世界。
脳科学は、同じ動物であれば、同じ結果が得られる。という世界です。

もちろん、まだ見つかっていない新しい脳機能の発見によって、「心理学的に〇〇だろう。」と思われていたことが、脳科学的に証明されることもあります。

似ているようで異なるふたつの学問。しっかり区別して頭の中を整理したいですね。

About|この記事を書いた人

浜端望美(はまばたのぞみ) 心理カウンセラー 3色パステルアート主宰一般社団法人日本心理療法協会 事務局長ベスリクリニックこころ外来 勤務JAPAN MENSA会員   1986年生まれ。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、広告業界に就職。印刷やデザインに携わる仕事をしながら、本格的にカウンセリングを学びはじめる。 2011年心理カウンセラーの資格を取得し転職。椎名ストレスケア研究所(株)に勤務し心理カウンセラー・講師としての経験を積む。その後、心療内科デイケア勤務や研修講師などの経験を経て独立。現役の心理カウンセラーでありながら、優秀なアートセラピストの育成、アートセラピーの普及活動に尽力している。 日本ではまだなじみの浅いアートセラピーを、メンタルケアの現場に積極的に取り入れ、そこから得たノウハウを体系化。『癒し』『デトックス』などという、漠然とした言葉で語られがちなアートセラピーの領域を、論理的に、かつ分かりやすく解説する。論理と感情がバランス良く組みたてられた独自のカリキュラムは、アートセラピストだけでなく、心理カウンセラー、コーチ、看護師、教員、療育担当者、デザイナー、経営者など幅広い層に定評がある。NEXT MORE >>>