絵・音楽・香りに投影される心理
『作品には作成者の心理状態が投影される』ということが、アートセラピーの領域では古くから研究されてきました。
子どもが描く山や太陽は父親の象徴、チューリップは母親の象徴、、など。
様々な意見がありますが、私自身この「作品に心理が投影される」ということには懐疑的です。
確かにその時の気分は投影されるかもしれませんが、それは“なんとなく今日は青っぽい絵が描きたい”、“今日は明るい色を使いたい”など、本人にも理由がわからないことがほとんどではないでしょうか。
潜在意識は、顕在化された瞬間に潜在意識ではなくなる。言葉遊びのようですが、認識できた時点でそれは潜在意識ではありません。
作品に心理状態が投影されることは事実かもしれませんが、それにどのような意味があるのかを正確に分析することはできません。
明るい絵を描くと明るい気分になる
では、この反対はどうでしょうか。
「明るい色の絵を描いていたら心がつられて明るくなってきた」というのは、現場でよく聞かれる感想です。
心が作品に投影されるのではなく、作品が心に投影される。その影響力の方が実際は強いのです。
脳神経外科の築山節氏は著書の中で、このように言及しています。
“人の行動と脳の働きは連動しています。顔の筋肉などを笑顔の形にするとその信号が脳にフィードバックされ、面白い・楽しいと感じてしまう。脳も笑ってしまうんです。”
『楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ』という状態です。
これを、アートセラピーでも応用することができます。
ためしに、紙とペンを用意して『優しい目』を描いてみてください。
優しい目は、優しい気持ちや優しさにふれた場面を思い出さないと描けないことに気づくでしょう。
このように、五感と感情は一致するのです。
怒った気持ちで優しい目を描く、という不一致はよっぽど器用な人でないとこなすことができません。
このように晴れた空を描いているうちに、心が晴れて開放的な気持ちになることはよくあることです。
これは音楽でも同じことです。
楽しい曲を演奏したり聞いたりしていたら、感情も引っ張られて楽しい気持ちになります。反対に、恐ろしい曲の場合は、恐怖心が湧き上がってきます。
香りの感じ方は、視覚や聴覚以上に人それぞれ大きく異なりますが、
自分がリラックスできる香りや、なんだか嫌なことを思い出してしま香り、というものがあるはずです。
自分や大切な人の心が健やかになる五感探しをしてみましょう。