資格取得から活動開始へ〜私がアートセラピーを仕事にするまで(2012年〜)

資格取得から活動開始へ〜私がアートセラピーを仕事にするまで(2012年〜)

「どうやったらアートセラピーを仕事にできるの?」

一般的な会社員と違って、大々的に求人があるわけではないアートセラピストのお仕事。
『アートセラピーの教科書』をご覧になっている方には、どうやったらアートセラピストになれるのか知りたい人も多いのではないでしょうか。

私自身がアートセラピストになるまでの道のりを書き記しておきます。
かかった費用等も公開していますので、これからアートセラピーのお仕事をしようとしている方はぜひ参考にしてくださいね。

はじめに。

私がアートセラピストとして活動し始めたのは2012年のことです。
2011年に心理カウンセラーの資格を取得していたこともあり、言葉に頼らない手段も身につけたい、自分の好きを仕事に活かしたい、という想いがありました。

アートセラピーの資格その1

はじめに学んだものは、絵から心理分析することをメインとしたアートセラピーでした。
心理分析に用いられるものとして有名なものは『バウムテスト』『風景構成法』などがあります。

カウンセリングで絵の心理分析を用いた正直な感想は、
・分析はあてにならない
・分析を行うことで患者さんが萎縮し自己表現できなくなる
・かえって昔の傷をえぐってしまうことがある
というものでした。

もちろん、絵をきっかけに今まで話せなかったことが話せるようになったり、コミュニケーションがより円滑になったり、自分を再発見したりと良いこともありました。

けれどそれ以上に、分析によってお互いに起こる思い込みに大きなリスクを感じたのです。

アートセラピーの資格その2〜分析をしない自己表現〜

分析を目的としないアートセラピーを探していたところ、臨床美術®の存在を知りました。

臨床美術は、独自のアートプログラムに沿って創作活動を行うことで脳が活性化し、認知症の症状が改善されることを目的として開発された芸術療法(アートセラピー)です。

臨床美術には5級〜1級までの資格があります。
私は約一年程かけて、臨床美術士の5級と4級を取得しました。

資格取得後は、高齢者施設や学童保育等で活動していた先輩の臨床美術士の元でお手伝いさせていただき、臨床美術としての経験を積みました。

参加者の感性にゆだねながら、五感と右脳を活性化させる臨床美術のアートプログラムはとても魅力的でしたが、活動を続ける中で金銭面の問題にぶつかりました。

材料費が捻出できず、継続が困難だったのです。

学んだノウハウを活かして独自のアートセラピーを開発

これまでに身につけたノウハウを活用して、自分なりに何かできないかと探していく中で『パステル』という画材に出会いました。パステルは非常に安価で軽く、水もいらないので材料費の問題を解決することができました。

そして、カウンセラーとして身につけていた心理学や脳科学の知識と、パステルアートの技法を組み合わせて開発したものが、『3色パステルアート®』です。

その後は、新しく生み出したアートセラピーである3色パステルアートを用いて、各地でワークショップを主催しました。

上の写真は、東日本大震災の被災地で行ったワークショップの写真です。
避難所にある集会場での開催です。

このほかにも幼稚園や学童保育、高齢者のデイサービスなど、たくさんの場所で3色パステルアート行いました。

当時はまだアートセラピストとしての実績が全くなかったので、
まずは100人まで無料でやろうと決めて無料で活動をしていました。材料費や交通費もほぼ自腹です。

アートセラピストとしてお金をいただく

ボランティアとしてアートセラピーの活動を続けていたある日、卒業したカウンセリングの学校から、「カリキュラムの枠が空いてしまっていて、何かできる人を探している精神科デイケアがある」というお話をいただきました。

このお仕事が、アートセラピストとしてはじめてお金をいただいた仕事です。

ボランティアでコツコツと活動している様子を、Facebook等に挙げていたので声をかけていただくことができました。
活動の様子が分かることも、病院側にとっては安心材料だったのでしょう。

有料・無料を問わず、たくさんの現場を経験したことで、自分自身にも実績と自信がついてきていました。
この頃から一般向けにも有料でワークショップを提供するようになりました。

アートセラピーの勉強をはじめてからここまででの期間は一年半程です。

ここまでにかかった費用

・某スクールの授業料…84,000円
・臨床美術の授業料…437,686円
・その他、ボランティア活動の材料費や交通費etc…

 

編集後記

どの資格にする?アートセラピーの学校の探し方

私はもともと広告代理店に務めていた経験があり、絵に興味があったので、絵を使ったアートセラピーの資格を探していました。

正直、資格はどれを取ってもそれぞれにメリットとデメリットがあるでしょう。
いちばん大切なことは、あなたが楽しんでできること。自信をもって良いと思えるものであること。
日本にはアートセラピーの国家資格がありません。そのため、自信をもって提供できるものでなければ、不安になって前に進めなくなってしまうこともあります。
反対に、自分が楽しみながら自信をもって実施できるものであれば、絵でも色でも音楽でも、どの資格をとっても大差はありません。

大事なことは資格取得の後

当たり前のことですが、資格を取得すればお仕事があるというわけではありません。
大学生だって大学を卒業しただけでは仕事につけず、就職活動を頑張ってるのだから当然のことですよね。

「金額はいくらに設定したほうが良いでしょうか」と質問されることも多いのですが、
はじめのうちはボランティアでも良いから経験を積むべき、とお話をしています。

もともと幼稚園の先生としてクラスを受け持っている、介護福祉士の資格を持っていて勤め先でアートセラピーを取り入れたい、というような人ならダブルライセンスとして、資格を取りたてでもプラスアルファの料金をいただくことができるかもしれません。

しかし、もしあなたが何も実績がない状態であれば、いただけるのは材料費と場所代程度、と思っておくと良いでしょう。

近所の高齢者施設や、放課後デイサービス、学童保育、未就学児サークルなど、興味のある場所に自分から積極的にアプローチをして、活動場所を作りましょう。

 

About|この記事を書いた人

浜端望美(はまばたのぞみ) 心理カウンセラー 3色パステルアート主宰一般社団法人日本心理療法協会 事務局長ベスリクリニックこころ外来 勤務JAPAN MENSA会員   1986年生まれ。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、広告業界に就職。印刷やデザインに携わる仕事をしながら、本格的にカウンセリングを学びはじめる。 2011年心理カウンセラーの資格を取得し転職。椎名ストレスケア研究所(株)に勤務し心理カウンセラー・講師としての経験を積む。その後、心療内科デイケア勤務や研修講師などの経験を経て独立。現役の心理カウンセラーでありながら、優秀なアートセラピストの育成、アートセラピーの普及活動に尽力している。 日本ではまだなじみの浅いアートセラピーを、メンタルケアの現場に積極的に取り入れ、そこから得たノウハウを体系化。『癒し』『デトックス』などという、漠然とした言葉で語られがちなアートセラピーの領域を、論理的に、かつ分かりやすく解説する。論理と感情がバランス良く組みたてられた独自のカリキュラムは、アートセラピストだけでなく、心理カウンセラー、コーチ、看護師、教員、療育担当者、デザイナー、経営者など幅広い層に定評がある。NEXT MORE >>>