認知症の予防と改善に効果的な臨床美術について知りたい人にオススメの本
臨床美術〜認知症治療としてのアートセラピー〜
金子健二編 日本地域社会研究所
臨床美術士の教育機関でも課題図書に指定されている入門書
臨床美術を開発した金子健二氏をはじめ、臨床美術士やカウンセラー、医師によって書かれた本です。
脳の仕組みや臨床美術がもたらす効果、その特徴、魅力、進め方など、詳細にわたって書かれています。
臨床美術士の育成を行っている造形芸術研究所でも、課題図書として指定されている臨床美術の入門編。
臨床美術が誕生したいきさつをはじめ、現場の治療についてまで幅広く知ることができます。特に患者さん本人との関わりだけでなく、その家族にも目を向けている姿が印象的です。
これまでにあった分析をメインとしたアートセラピーと、臨床美術との違いも非常にわかりやすく解説されています。
その効果に関しても、癒しや自己実現などといった漠然とした書き方だけではありません。実際の治療現場で行われたWAIS-Rによる知能検査、GBSによる感情尺度の結果を開示するなど、医学的なエビデンスをもとに解説されている専門書ですので、納得感があります。
ひとつ難点を言えば、2007年に初版であるため情報が古いことです。
脳機能に関しては最近の研究結果とはことなる情報が掲載されています。
また上記のWAIS-Rによる知能検査は2006年にWAIS-Ⅲが販売されたことをきっかけに、販売元からの提供が終了している古い検査です。
医師やカウンセラーが読むには古い情報が多いので注意が必要ですが、本書の目的である臨床美術のあり方を知りたい人にとっては問題ありません。