アートセピストインタビュー[介護ステーションぶらんち様]

 

アートセラピーの教科書では、現場で活躍するアートセピストや、
施設のスタッフさんにインタビューをしています。
実際の現場はどうなっているの?そんな疑問の声にお応えします。
今回は麻布十番にある介護ステーション『株式会社ぶらんち』様にお邪魔して、
3色パステルアートインストラクターの外山春美さんにインタビューを行いました。
【介護ステーションぶらんち:http://branch-smile.com

外山さんが行なっているアートセラピーについて教えてください。

私が行なっているのは、『3色パステルアート』というソフトパステルを用いたアートセラピーです。赤・青・黄という限られた色だけを用いて絵を描く、心理学と脳科学基に開発されたアートセピーです。

どのような人を対象に活動していますか?

ひとつは近くの高齢者デイサービスです。
ここでは、認知症の方も何人かいらっしゃいますが、比較的元気な方が多くて。
もともと絵を趣味にしていた人もいます。

年齢は80代の方がメインで、70代後半~90代の方を対象にしています。
最高齢は93歳の男性です。

あとはこの場所(ぶらんちのオフィス)に、一般の人と訪問介護に伺っている先の高齢者を呼んで開催しています。

中には身体に不自由があったり、認知症の人もいますが、パステルアートは誰でも楽しめるものなので、「みんな一緒」と思ってクラスを分けずにやっています。

一般の参加者と訪問介護の利用者さんは親子くらいの歳の差。
一般の方が高齢者の方の作品を上手に褒めてくださったり、すごくあたたかい場になっています。
はじめて参加する一般の方には、「高齢者の方も一緒に参加します」と事前に伝えていますが、それで参加を遠慮するような人も特にいません。
スタッフ同士でも、やっぱり(みんなで)一緒が良いよね。と話しています。

アートセラピーを取り入れる前と後で変化はありましたか?

まず、みなさん描いているときってすごく集中していて、、集中力がつくんです。
デイサービスでは90分やっていますが、飲み物もとらずにみなさんずっと描いています。

それに、みなさん楽しんでいてすごく笑顔になっています。
お互いがお互いの作品を褒めているんです。

パステルアートって男性は後ろ向きで「女がやるようなことはできない」と言っていたのですが、
周りの女性が「こんなこと他では経験できないわよ!」と声をかけてくれて、
その男性が参加したときは、「あらー!お上手!!」と褒めたりして。
すごく会話が増えるんですよね。

あとは、今絵を使ってカレンダーを作っているのですが、自分だけのもの、世界にたったひとつの作品が残る、ということをみなさん本当に喜んで楽しんでらっしゃいます。

誰でもそうですが、自分の作品が残る喜びっていうのは想像以上にすごいので、、
3色パステルアートを経験した人は、わぁーって顔が明るくなって、描いている途中も楽しそう。
一般の人たちも、忙しくて何も考えずに集中する時間ってなかなか取れないでしょうから、その場を提供できることが素晴らしいなと思います。

特にどのような部分にアートセラピーの効果を感じていますか?

感性が豊かになっているなと感じます。
それと情緒も安定してきていると思います。

3色パステルアートのプログラムに「ぐるぐる色の森」(下写真参照)という絵があるのですが、
それぞれ自分なりに考えて好きな色味を作っていて、
すごく深みのある森ができたり、
自分が昔見たものをイメージしたという人がいたり、
自分が過去を見たものを想像したりして、自由な森がたくさんできました。

日々の充実感が増していることも見ていてわかりますね。
自分の作品を本当に楽しそうに見てらっしゃるので、、もう完成、という段階でもまだ描き足したりして、「もうこれでいいや」という人はいなくて、最後の最後までこだわって描かれています。

『ぐるぐる色の森』3色のパステルを混ぜて色をつくりながら森を描いていく作品。

現場での印象的なエピソードはありますか。

80代の半ばくらいの元銀行員の男性で、耳が遠い方がいました。
最初はどうやって良いか分からず、スタッフが近くについて説明しても、手が動かないという感じだったのが、半年後にはひとりで感性豊かな絵を描いていました。
その進歩ってすごいです。

(80代以上でも徐々に進歩していきますか?)

していきますね。
1時間半の間に2枚描くのですが、最初の頃は高齢だしあまり根詰めてもと思い、1枚描くと途中で軽い運動をするなど工夫していました。
でもみなさんすごい集中力で1枚目が終わったらすぐ2枚目に取り掛かるくらい意欲的です。

私は自分のことを、枠があって想像力が少ないタイプだと思っていて、絵も苦手です。
参加者の人の発想のほうが自由で「勉強させていただきました。」という気になる。

毎回見本を用意しているのですが、回数を重ねる毎に、参加者の人から「(見本の)この通りには描かないぞ、私は好きにこういう風に描くのよ」という意思をすごく感じるようになってきました。

お互いにその絵を褒めあってりして、描いていると笑顔が増えるのですごく良い連鎖になっています。
私自身もリラックスして癒されていくなと感じています。

About|この記事を書いた人

浜端望美(はまばたのぞみ) 心理カウンセラー 3色パステルアート主宰一般社団法人日本心理療法協会 事務局長ベスリクリニックこころ外来 勤務JAPAN MENSA会員   1986年生まれ。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、広告業界に就職。印刷やデザインに携わる仕事をしながら、本格的にカウンセリングを学びはじめる。 2011年心理カウンセラーの資格を取得し転職。椎名ストレスケア研究所(株)に勤務し心理カウンセラー・講師としての経験を積む。その後、心療内科デイケア勤務や研修講師などの経験を経て独立。現役の心理カウンセラーでありながら、優秀なアートセラピストの育成、アートセラピーの普及活動に尽力している。 日本ではまだなじみの浅いアートセラピーを、メンタルケアの現場に積極的に取り入れ、そこから得たノウハウを体系化。『癒し』『デトックス』などという、漠然とした言葉で語られがちなアートセラピーの領域を、論理的に、かつ分かりやすく解説する。論理と感情がバランス良く組みたてられた独自のカリキュラムは、アートセラピストだけでなく、心理カウンセラー、コーチ、看護師、教員、療育担当者、デザイナー、経営者など幅広い層に定評がある。NEXT MORE >>>