最新の心理療法オープン・ダイアログ・ケアとアートセラピー

最新の心理療法オープン・ダイアログ・ケアとアートセラピー

医療・教育・福祉の現場では、発達障害や精神疾患のケアの主流が、「モノローグ(=個別対応)」から、「ダイアログ(=コミュニティケア)」へと変化する過渡期をむかえています。

集団の中で問題行動を起こす人を、これまでは個別指導と称して隔離してきました。
しかし、その原因は個人にあるのではなく全体の問題であると捉えることが、ダイアログ・ケアの考え方です。

オープン・ダイアログ・ケアとは

オープン・ダイアログ・ケアは、フィンランドで実践された統合失調症の治療のことをさします。患者、家族、福祉士、カウンセラーなどがチームを組んで、対話(=ダイアログ)する療法です。

フィンランドのある病院では、統合失調症の患者の再発率71%でした。しかしオープン・ダイアログ・ケアを取り入れたところ、再発率を23%まで抑えることができたという成果を出しています。

他者との対話、フラットなコミュニケーションが、自分を知り認めていく手助けとなります。
承認欲求が過剰になっていた人も、対話を通して自然と外へ意識が向くようになります。
そして、自分もこのコミュニティ(社会)の一員なのだという気持ちが芽生えます。

自分のことばかり考えていることは想像以上に苦しいものです。
お互いの存在を確認し認め合うことで、良好な対人関係が築き上げられます。
良好な対人関係が得られることで心理状態も落ち着いてきます。

アートセラピーを活用してオープン・ダイアログ・ケアの実践を

フィンランドでの方法を全く同じように再現することはできませんが、オープン・ダイアログ・ケアの大事な要素を取り入れて、アートセラピーを実施することはできます。

私の場合は、3色パステルアートを用いて作品を描いた後、必ず鑑賞会を行うようにしています。
鑑賞会の時間にこのオープン・ダイアログ・ケアの要素を入れます。

参加者の人にそれぞれの作品のこだわりのポイントや、苦労したところや、完成までのプロセスをお話ししてもらうのです。

みなさん描いている最中は自分のことだけに夢中。まさに外に意識が向いていない状態です。
なので他の参加者の人の作品が見られる鑑賞会は大盛り上がり。
たくさんの対話が生まれます。

もちろんこの鑑賞会には一定のルールが必要です。
・品評会にならないように注意する
・上手や下手という言葉は使わない
・ひとりが一方的にではなくみんなが会話に参加できるようにする
など、他にも対話を円滑に進めるための工夫はたくさんあります。

ここでの対話が、学校や仕事でのコミュニケーション力向上にも役立ちます。

大人だけでなく、こどもを対象としたアートセラピーでの活用も非常に有効です。
ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

About|この記事を書いた人

浜端望美(はまばたのぞみ) 心理カウンセラー 3色パステルアート主宰一般社団法人日本心理療法協会 事務局長ベスリクリニックこころ外来 勤務JAPAN MENSA会員   1986年生まれ。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、広告業界に就職。印刷やデザインに携わる仕事をしながら、本格的にカウンセリングを学びはじめる。 2011年心理カウンセラーの資格を取得し転職。椎名ストレスケア研究所(株)に勤務し心理カウンセラー・講師としての経験を積む。その後、心療内科デイケア勤務や研修講師などの経験を経て独立。現役の心理カウンセラーでありながら、優秀なアートセラピストの育成、アートセラピーの普及活動に尽力している。 日本ではまだなじみの浅いアートセラピーを、メンタルケアの現場に積極的に取り入れ、そこから得たノウハウを体系化。『癒し』『デトックス』などという、漠然とした言葉で語られがちなアートセラピーの領域を、論理的に、かつ分かりやすく解説する。論理と感情がバランス良く組みたてられた独自のカリキュラムは、アートセラピストだけでなく、心理カウンセラー、コーチ、看護師、教員、療育担当者、デザイナー、経営者など幅広い層に定評がある。NEXT MORE >>>